社会保険の加入対象の拡大については、従来より議論がなされてきました。少子高齢化により支え手が減少する中、いかに加入者を増やすかが議論の中心です。
今通常国会において「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が審議され、6月13日に可決・成立しました。主な改正点は、以下の通りです。
短時間労働者の企業規模要件を縮小・撤廃、短時間労働者の賃金要件を撤廃
パートタイマーの社会保険加入の要件は、週の所定労働時間が事業所の通常の労働者(例えば、正社員)の週の所定労働時間より短く、かつ3/4以上の場合(いわゆる4分の3要件)とされます。
このほか、社会保険に加入する従業員が51人以上の事業所※1(令和6年10月以降。「特定事業所」といいます)においては、
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 給与が月額88,000円以上※2
- 2か月を超えて働くことが見込まれる
- 学生でない
以上をすべて満たす場合に、社会保険の加入義務が生じます。(雇用保険の加入要件に似ていますね)
このうち、※1の企業規模要件が段階的に縮小・撤廃、※2の賃金要件が撤廃されます。
企業規模要件の段階的縮小・撤廃は、以下のスケジュールで行われます。
- 2027年10月 36人以上
- 2029年10月 21人以上
- 2032年10月 11人以上
- 2035年10月 撤廃(1人以上)
※2の賃金要件は、いわゆる「106万円の壁」ですね。「壁を撤廃」と言うと何だかよく聞こえますが、要するに賃金を低く抑えて社会保険に入らない働き方をすることが出来なくなる、ということです。
社会保険料を負担する必要があります。払った保険料は将来の年金額に反映されるなどのメリットもあります。しかし企業側は単に負担が増えるだけです。
個人事業所の適用対象を拡大
法人、及び法定17業種で常時5人以上の者を使用する個人事業主は社会保険の強制適用事業所でした。
つまり、
①法定17業種以外で常時5人以上の者を使用する個人事業主
②業種に関係なく、常時5人未満の者を使用する個人事業主
これらは適用除外でした。
このうち、①が2029年10月に撤廃されます(ただし、2029年10月時点で現に存在している事業所は当分の間、適用除外となります)。適用除外は常時5人未満を使用する個人事業主のみです。
法定17業種は、以下の通りです。
①物の製造、②土木・建設、③鉱物採掘、④電気、⑤運送、⑥貨物積卸、⑦焼却・清掃、⑧物の販売、⑨金融・保険、⑩保管・賃貸、⑪媒介周旋、⑫集金、⑬教育・研究、⑭医療、⑮通信・報道、⑯社会福祉、⑰弁護士・税理士・社会保険労務士等の法律・会計事務を取り扱う士業
詳しくは厚生労働省のホームページをご参照ください。
※記載内容は投稿時のものです。法改正等により変更となる場合があります。
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